Apple IntelligenceレビューVol.6 | 3つの新機能をテスト
9月末の「OS 26」群登場時に、その新機能についてまとめたVol.5のレビューを投稿したが、その中で触れることができなかったFoundation Models FrameworkとWorkout Buddy、新しいiOS 26.1で新たに実装された日本語のライブ翻訳の3つについて、この記事では実際に使った感想を共有する。
Foundation Models Framework
Vol.5のレビュー執筆時点では、このフレームワークを活用したアプリはあまり無かった。しかし、そこから1ヶ月以上の時が過ぎ、Apple自身がNewsroomにてアプリの例を紹介するまでになった。その中でも、ここでは筆者が使う中で気になった2つのアプリを紹介したい。
一つは、「Cellwalk」アプリだ。イマーシブな生物学アプリで、詳細な3Dの細胞を分子レベルで探検したり、生物の分子マシンを見て回ることができるとAppleは先ほどの記事中で紹介している。その3Dモデルを観察する中で、調べたいものをタップするとその説明が登場するところまでは従来からこのアプリにあった機能のようだ。そして、その説明文中で気になった単語をタップすると、その単語の意味をリアルタイムにFoundation Modelが解説してくれる。もちろん、AIモデルを使っているため、Look Upで調べられるただの単語の意味ではなく、実際にこの文脈上で使われている意味として解説を見ることができる。その解説は4-5行程度で簡潔にまとまっており、さらにそのレスポンス速度もiPhone 17ではおよそ2秒かからない程度であるため、使用上も全く問題ないだろう。このアプローチは、学習においてユーザーが調べたいことをピンポイントで、且つアプリ横断なしに学べるため非常に有意義だと思った。


無料で二つは、「Stuff」アプリだ。ユーザーの頭に浮かんだたくさんのやるべきことの記録を取るために設計されたアプリで、ユーザーが生活を整え、目標を達成するのに役立つと記事中で紹介されている。一見するとただのリマインダーアプリのような形だが、「Voice Mode」と「Scan Mode」の2つにFoundation Modelの力が生かされている。Voice Modeでは、ユーザーが口語でアイデアを話すだけで、それをタスクの形に整理してくれる。Scan Modeでは、殴り書きのような形のメモであっても、それをOCRした上で読み取り整えてくれる。いずれも同じStuffアプリのTo-Doとしてまとまるため、ラフに思いついたことを吐き出すことでタスクを忘れることを避け、且つ後から見た時の視認性を上げてくれる。




ここまで2例活用例を紹介してきたが、いずれもかなり実用的であったと感じた。では、このFoundation Modelの性能はいかほどなのか。Locally AIアプリでFoundation Modelに固定した上で検証を進める。今回は比較対象を、すでにApple Intelligenceで利用できていたChatGPT (GPT-5)とする。また、併記する速度はiPhone 17においてLocally AIアプリで出した速度とSiri経由でChatGPTが出した速度だ。
Q.ロンドンと東京を100字で比較して
Foundation Model (3s): ロンドンと東京は、それぞれ異なる文化と生活スタイルを特徴としています。ロンドンでは歴史と現代が融合し、多様な文化が共存しています。交通機関が発達しており、公共交通が便利です。一方、東京は高層ビルが立ち並び、技術の進化が顕著です。日本独自の伝統と革新が交錯し、生活は効率的で多様性に富んでいます。ChatGPT (5s): ロンドンは歴史的建造物と伝統が息づく都市で、天候は曇りがち。東京は近代的な高層ビルと文化の融合が特徴で、四季の変化がはっきりしている。
いずれも大きく外してはいないが、100字という制限にはどちらも収まっていない。ChatGPTは67字、Foundation Modelは147字だったため、この設問ではどちらも減点とした。
Q.瀬戸内沿岸におけるため池の役割を教えて
Foundation Model (6s):瀬戸内沿岸におけるため池は、さまざまな重要な役割を担っています。以下にその主な役割をいくつか挙げます。
これらの役割を通じて、瀬戸内沿岸の環境や生活を支える重要な施設となっています。
ChatGPT (6s):
瀬戸内沿岸のため池は、主に以下のような役割を担っています。
農業用水の確保:降水量が比較的少ない瀬戸内地域では、ため池が水田や畑への安定した灌漑水源となります。
洪水調整:雨水を一時的に貯めることで、急な増水や下流域の洪水被害を軽減します。
水質・生態系保全:ため池は魚類や水生植物の生息地となり、多様な生態系を支えます。
防災・生活用水補助:一部のため池は非常時の防火用水や生活用水の補助としても機能します。
瀬戸内地域の地形や気候に適応した、伝統的かつ重要な水資源管理施設です。
おそらくSiriから呼び出すChatGPTにはシンプルな回答をするようなチューニングが入っているのだろう。内容に関してはほぼ互角だが、観光資源として使うという点はFoundation Modelにのみ指摘できている。
Q.オイラーの公式って何だっけ
Foundation Model (3s)
オイラーの公式は、複素数論において重要な方程式で、次のように表されます:
e^ix = cos(x) + i sin(x)
ここで、 eは自然対数の底、 iは虚数単位、 xは実数です。この公式は、複素数の指数形式と三角関数の関係を示しており、特に極形式での複素数の表現に役立ちます。オイラーの公式は数学や物理学、特に解析幾何学や微分方程式解析において広く用いられています。
ChatGPT (2s):
オイラーの公式は次の式で表されます。
e^{iθ} = cosθ + i sinθ
ここで、e はネイピア数、i は虚数単位、θ は実数の角度です。複素解析やフーリエ解析でよく使われます。
ここでも回答量の差の傾向は同じだ。だが、今回注目したいのはその速度で、オンデバイスで済むFoundation Modelの方がオンラインのChatGPTよりも時間がかかる結果となった。
Q.現在の福岡ソフトバンクと北海道日本ハムを200字で比較して
Foundation Model (4s):
福岡ソフトバンクと北海道日本ハムは、日本プロ野球(NPB)の主要チームであり、それぞれ特徴があります。
福岡ソフトバンクは、2005年に設立され、2013年に日本一に輝きました。チームカラーは青と白で、ホームスタジアムは福岡PayPayドームです。ソフトバンクは若手育成に力を入れ、多くの若手を育成し、将来性を重視するチームとして知られています。
一方、北海道日本ハムは1946年に設立され、長い歴史を持つチームです。チームカラーは赤と白で、ホームスタジアムはZOZOマリンスタジアムです。日本ハムは伝統と実績を持ち、安定した成績を残すことが多く、ファンからの支持も厚いです。
両チームはそれぞれ独自の魅力を持ち、ファンにとって魅力的な存在です。
ChatGPT (6s):
福岡ソフトバンクホークスは、2025年シーズンで強力な投手陣と安定した打線を維持し、上位争いを繰り広げています。一方、北海道日本ハムファイターズは若手選手の台頭と投手陣の奮闘で中位をキープしています。両チームは今後の対戦での活躍が期待されます。
意図的に意地悪のつもりで出したが、流石にこれはChatGPTの完勝だ。もちろんChatGPTの方も、Siri呼び出しだからか速度が重視された結果、序盤から上位を独走していた日本ハムに「中位をキープ」というなど全て正しいわけではないが、Foundation Modelの嘘八百に比べれば圧倒的だ。
今回は敢えて複雑なお題ではなく日常で使いそうな簡易的な質問をしたが、最終問を除き十分にFoundation Modelが内容、速度ともにChatGPTと張り合えていることがわかっただろう。どうしてもOS面の実装の仕方からかAIに弱いと思われがちなAppleであるが、現状頼っているChatGPTと比べても遜色ないこのAIモデルが無料開放されたと捉えるとかなりの進歩であろう。特に、これがオンデバイスで完結していることを考えると、Appleが重視するプライバシやセキュリティの面でも相当なポテンシャルを秘めていると言えよう。
来年の新しいSiriではより個人的な情報にローカルでアクセスできるようになるとしており、その処理にもFoundation Modelが利用されると考えるが、ぜひSiriへの普通の質問の際にも、ChatGPTだけでなくFoundation Modelによる回答もできるようになってほしいと切に願う。
AirPodsのライブ翻訳
同時通訳を耳元でしてくれる新機能がAirPodsのライブ翻訳だ。すでに他言語では利用できていたが、このiOS 26.1のアップデートで日本語をはじめとした言語に対応が広がった。対応のAirPodsはH2チップを搭載したAirPods 4 (ANC)とAirPods Pro 2、3となる。あらかじめ言語をダウンロードしておくことで使用可能となり、Appleの翻訳アプリの右下に追加された「ライブ」から言語を選択すると利用可能になる。
ここの画像でも示されている通り、両耳に装着した上でつまみを同時に長押ししても簡単に起動できる。そのため、使いたいシチュエーションになったらその呼び出しも一瞬という算段だ。
起動中は自動的にノイズキャンセリングがオンになり、相手の喋っている音声を低減する。この仕組みの影響からH2チップを搭載していてもAirPods 4の下位モデルでは利用できない点に注意が必要だ。最初にどの言語からどの言語へ翻訳しているかが示され、その後翻訳がスタートする。

翻訳中は専用の画面に遷移し、お互いの喋っている音声がチャット状の形式で文字起こしされる。相手の話したものは、相手の言語が小さく文字起こしされた上で、翻訳先の聞こえてくる音声が大きく表示される。一方で、ユーザーの話した音声も文字起こしされ、相手の言語がテキストとして表示される。そのため、iPhoneの画面を見せながら話すことで円滑に会話ができるだけでなく、再生ボタンを押すことでiPhoneのスピーカーから音声でも相手に伝えられる。
仕組み上、相手の話していることはiPhoneのマイクで拾うため、おそらくiPhoneを相手に向けた上でユーザーは音声を頼りに会話を進めることが想定されているのだろう。そうすれば、相手は文字情報で知ることができ、必要に応じて音声も流せる中で、ユーザーは音で自然に会話ができるというものだ。
音声認識精度は速度なりといった印象で、決して高いものではないが、用途を考えたら十二分に許容範囲であろう。
動画中では筆者の言い間違いもあり完璧な訳とは言えなかったり、速度も自然な会話の速度には及ばない。しかし、おおよそ汲み取れる範囲であることと、相手の音声に一部かぶせて翻訳してくれる分同時通訳よりも早く済んだりと、画面を見られないシチュエーションにおいても十分な翻訳が実現できるのはとても意味があると感じた。一点疑問形の文章が断定の言い方になってしまった点があったが、ギリギリ許容範囲ではないかと総括する。
Workout Buddy
第6弾にわたって投稿しているこのApple Intelligenceレビューシリーズにおいて最も体を張った検証をした、といっても過言ではないのがこのWorkout Buddyだ。
ランニング・ウォーキング・サイクリング・エリプティカル・ステッパー・HIIT・筋力トレーニングのワークアウトにおいて、Apple Intelligence対応のiPhoneとそれにペアリングしたApple Watchで利用できる機能で、ワークアウトデータのリアルタイム分析に基づいて励ましてもらえるものだ。特筆すべきなのはその声で、Apple Fitness+のトレーナーの声をもとに作られた3つの音声を使って励ましのメッセージを受け取れる。ただし、Fitness+は現在日本では提供されておらず、英語圏を中心に欧州や南米、中東で展開されているため、このWorkout Buddyについても英語設定が必要となる。

ということで、この機能を試すために実際に屋内ランニングを5kmしたので、そこで流れた音声をご紹介する。
Ready to get your Saturday run started. This is your 6th workout this week. You’ve closed your move ring every day this week including today, and you’ve closed your exercise ring today. Now you’re working toward a perfect activity rings week.
(土曜日のランを始める準備ができました。今週は6回目のワークアウトですね。今週は今日を含めて毎日ムーブリングを完成させており、今日はエクササイズリングも完成しました。これで、アクティビティリングで完璧な1週間の達成に向かっています。)
スタート時にはこのガイドが流れた。ただ始めるというだけでなく、アクティビティリングのことについて触れるのがポイントだろう。その日に加えて、1週間分のデータを併せて示すことでモチベーションを上げることに寄与している。
1 kilometer in the books. Your pace was 8 minutes and 31 seconds and your average heart rate for that split was 138.
(1キロメートル、記録完了です。この区間のペースは8分31秒、平均心拍数は138でした。)
2 kilometers completed. Your pace for that kilometer was 7 minutes and 39 seconds and your average heart rate was 151. You’re picking up the pace.
(2キロメートル、完了です。この1キロのペースは7分39秒、平均心拍数は151でした。ペースが上がっていますね。)
3 kilometers down. You ran that last one in 7 minutes and 42 seconds, with an average heart rate of 153.
(3キロメートル、終了です。直近の1キロは7分42秒、平均心拍数153で走りました。)
Your 4 kilometers end. That last split was 7 minutes and 52 seconds, with an average heart rate of 159.
(あなたの4キロメートルは終了です。最後の区間は7分52秒、平均心拍数は159でした。)
これらがkmスプリットごとのアナウンスだ。毎回共通して、スプリットタイムと平均心拍数を教えてくれる。Apple IntelligenceというAIを使っている点を生かして、毎回違う言い回しでくどくならないようにしている点はよかった。また、2km地点ではペースが上がっていることも教えてくれ、前回スプリットを確認せずとも知りたい情報が手に入るようになっている。
Workout resumed.
(ワークアウトを再開しました。)
水分補給のためワークアウトをDigital Crownサイドボタンの同時押しにより一時停止し、そこから復帰した時の音声だ。簡潔に再開したことを伝えてくれている。ここで前回までどうだったかの情報を教えてくれるとそれはそれで嬉しいのかもしれないが、実態としては再開時にApple Watch、またはiPhoneの画面を見るため必要性は高くないと判断されたのだろう。
Halfway point. 2.5 kilometers.
(中間地点です。2.5キロメートル。)
中間地点報告。味気ないと言えばそれまでだが、必要最低限だ。
Goal achieved. Five kilometers. You’re at 4.9 kilometers. You’re picking up the pace, covering that last one kilometer in 7 minutes flat.
(目標達成。5キロメートルです。現在4.9キロメートル地点です。ペースを上げていますね、最後の1キロを7分ちょうどで走っています。)
一番疑問を感じたのはこの部分だ。達成した通知であるはずだが、処理が追いついていないのか5kmといった直後にその手のひらを返す4.9kmとのアナウンス。Apple Watchの画面上では5kmと表示されていたため、4.9kmが誤報であろう。ここはしっかりと5km終わったことと、そのペースについてのみ触れればよかったと思った。
Great job logging your run today. You ran 5 kilometers in 39 minutes and an average pace of 7 minutes 43 seconds per kilometer with an average heart rate of 152, and a max heart rate of 160.
(今日のランの記録、お疲れ様でした。5キロを39分で走り、平均ペースは1キロあたり7分43秒、平均心拍数は152、最大心拍数は160でした。)
これがワークアウト終了時のアナウンスだ。スプリットと同様にペースと平均心拍数はもちろん、最大心拍数にも触れるのが終了時の特徴だろう。また、そのメッセージも “Grate job logging run today.”という言い回しで、Apple WatchやiPhone、AirPodsという記録するデバイスがBuddyになるというメッセージがこのloggingという語に表れているだろう。
このワークアウトを終え、総括としての感想だが、従来からあるSiriの声のアナウンスからは大幅に改善されている印象を受けた。毎回言い回しが違う点は、正直機能面としての必要性は薄い。しかし、実際に走った身からすれば定型文でないというのは少し嬉しくなるのも事実だ。一方、Buddyとして一緒に戦う仲間なのであればもう少し情報量を増してもいいのではとも思った。室内ランニングにおいても強度レベルや消費カロリーなど得られている情報はもっと存在する。そのため、それを1kmスプリットに限らずレベルが上がったタイミングや、150BPMに到達したタイミング、750kCalを回ったタイミングなど、せっかくこの機能をオンにするからにはもう少し声かけをしてほしいとも思った。
なお、一言一句記録したいという気持ちから今回はAirPodsの片耳をマイクに当て録音をする都合上から屋内ランニングをしたが、屋外だと標高など得られる情報に応じて増えるものであるということは補足する。
Workout Buddyはぜひ日本語展開を期待したい機能である。それがたとえSiriの声であったとしても、今日本語で使える定型のスプリット通知からは格段な進化であるため、Fitness+トレーナーの声にこだわらず言語展開を進めてほしいというのも今回感じた点だ。
総括
今回ピックアップした3つの新機能はどれも大きいアップデートであったと感じている。特に、ライブ翻訳については今からでも日常生活に役立つ人はいるだろう。一方、Foundation Modelはデベロッパの対応が待たれるも、その性能はご理解いただけただろう。今後のSiriにかなり期待できる。そして最後のWorkout Buddyについては、日本語に対応していないのが非常に惜しいものの、その機能は高く評価でき、日本語に対応した世界線ならば重用する機能になるだろう。
遅れていると散々言われているこのApple Intelligenceだが、その裏では着実に準備を進め、前述した来年のパーソナライズされたSiriへの足がかりはすでに整っていると言えよう。今後にもぜひ期待したい。
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