iPhoneの衛星経由のメッセージ | 緊急時における新たな選択肢
2025年12月9日、以前より米国などで展開されていた衛星経由でiMessageやSMSを送信できる機能が日本にも新たに展開された。これにより、モバイル通信ネットワークやWi-Fiが通じないところでも従来の緊急SOSに加えてiMessage・SMSにより連絡をつけることが可能となった。
概要
2022年11月15日、米国・カナダでEmergency SOS via SatelliteとしてiPhone 14以降で衛星から直接SOSを送れるようになった。1また、同時にFind Myによる位置情報共有も衛星経由で可能になり、セルラー圏外でできることが広がった。続いて、12月には欧州各国やニュージーランドにも拡大され、日本には2024年7月にサービスインされた。2日本のサービス開始時点で、この機能はすでにリリースされていた国々で人命救助に役立った実績が報告されていた。
対象機種は前述した通りiPhone 14以降の全モデルで、iPhone 16eを含むどのiPhoneでも利用できる。米Globalstar社の低軌道衛星を利用して、大型アンテナを必要とせずiPhone内部のモデムチップと無線部品で通信ができることを特徴としている。
当初から現在に至るまで、Globalstar社との契約の兼ね合いからか、このEmergency SOS via Satelliteは2年間無料という方針を打ち出していた。そのため、2022年11月のリリースインから2年後の24年末からは有償となるはずだった。しかしながら、2023年11月に、すでにiPhone 14をアクティベートしていたユーザーに対して1年間の無料延長を発表した。さらに、2025年9月にはiPhone 14とiPhone 15を対象にもう1年の無料延長を発表しており3、これによりiPhone 14を当初から使っているユーザーも含めて一切の利用料は発生していない。その先については明記されていないものの、Globalstar社との契約が現在のまま続くならばおそらく無料での利用が続いていくだろう。
今回新たに提供が開始した衛星経由のメッセージはiOS 18に合わせて米加でリリースインしていたもので、今年5月にメキシコに拡大されたのに続いて、北米外初として日本に提供拡大された。また、この間に発表されたApple Watch Ultra 3についてもこの衛星機能に対応したため、日本では提供開始時点から利用できる。
なお、今後紹介する「探す」「メッセージ」の2機能については、弊誌管理人いちごもちの情報によれば岩手県内の一部地域において使えないという事象が発生しているようだ。
実使用例
空方向に開けた場所で擬似的に圏外環境を作り出して衛星に接続した。
コントロールセンターから衛星の接続アシスタントを起動すると、「衛星通信接続デモ」「メッセージ」「探す」「緊急SOS」の4つのメニューが表示される。

衛星通信接続デモ
デモを開くと衛星に接続する様子を試すことができる。この機能はネットワーク環境がある状況でも行うことができるもので、画面の指示に従うことで一時的にモバイル通信接続をオフにすることで試すことができる。
画面には地球と衛星のシンボルが表示される。空が開けた環境ならスムーズに衛星に接続でき、表示される矢印の方向にiPhoneを向けることで現在地を示す丸印が緑色になり衛星に接続したことを知らせてくれる。

緊急SOS
緊急SOSに関しては実際に試すことができないため、こちらもデモの紹介に留めておく。緊急SOSでは、ユーザーが衛星経由で発信したメッセージをまずAppleの「衛星中継センター」に送信する。このセンターにはAppleが訓練した緊急対応スペシャリストが待機しており、メッセージの内容に応じてユーザーの代わりに公的緊急サービス(日本では119など)に連絡することになっている。
デモでは、緊急事態の種類や状況に関する質問への回答が求められ、さらに事前に登録しているメディカルIDと位置情報も送信される。そのため、入力すべき情報が明確化され、容量を最小限に圧縮することで救助側が迅速に状況を把握できるように工夫されている。実際のSOSシーンでも、ユーザーから送信される、どんな緊急事態か、危険はあるか、怪我人はいるか、といった状況アンケートへの回答と位置情報、高度、iPhoneの電池残量、メディカルIDが送信されるほか、さらにユーザーの緊急連絡先にも共有されるようにできている。

探す
これについても以前から利用できた機能だ。衛星経由の位置共有では、ユーザーが自発的に「自分の現在地を共有」を実行すると、iPhoneがGPS測位データを短いテキストデータにまとめ、衛星経由で送信する。このデータはiCloud経由で指定した家族や友人などのFind Myに位置情報として表示され、この機能では緊急対応としてではなくAppleの通常のクラウドインフラを通じて共有される仕組みだ。
ユーザーのFind Myの「自分」ページのところに、衛星接続時は「衛星経由の位置情報」が追加される。」を押すと、衛星の方向にiPhoneを向け続けるようDynamic Islandに指示が書かれ、その表示が示す衛星の方向にiPhoneを向けることで位置情報が送信される。送信されると、他の人から見た際の位置情報の更新が行われ、ユーザーからは最後に送信した位置情報がたった今であると表示される。この画面では15分後に再送信できます、と表示されるため、15分間隔で最新の情報が更新できるものだと考えられる。



メッセージ
ここからが今度のアップデートでできるようになった新機能である。
iMessageやSMSの通信で用いるメッセージアプリを衛星通信環境下で開くと、Dynamic Islandに「衛星経由でメッセージの送受信ができることを相手に通知します」という旨と共に、「衛星経由で “メッセージ” を使用」というボタンが表示され、これを押すことでiMessage via Satelliteが有効化される。

続いて、画面に従って操作を続けることで、空が妨げられずに見えるところへの移動を促される。衛星を発見すると、前述のデモと同様の矢印のガイドによって衛星へ接続しやすい。

メッセージを送信する画面の背景は設定していても表示はされず、メッセージの相手にも「iMessage・衛星経由」として表示される。メッセージアプリの操作体験に関してはネットワーク接続時と大差ないが、写真やステッカーの送信はできず、衛星経由では送信も受信もテキストとTapbackに限定される。
なお、利用できるのはiMessageとSMSのみで、SMSに関しては、記事公開時点の日本ではソフトバンクとNTTドコモがサービスを提供している。auはStarlink Directとして独自に衛星サービスを提供しているが、このAppleのMessages via Satelliteは利用できない。また、iMessageについてもグループiMessageに関しては利用不可という表示が出るため、容量の関係なのか、個人間のチャットに限定されるようだ。

送信の速度は流石にモバイル接続時と比べると遅いが、衛星を介していることを考えると充分に使える範囲だと感じた。
総括
このiPhoneの衛星通信は、もちろん日常動作を行うものではないが、緊急時に使う必要がある機能を網羅しているという印象を強く受けた。従来から使えたSOSはもちろんだが、iMessageやFind Myについても家族や友人に緊急の連絡をつけるという意味で非常に有用だと思った。もちろんこの機能を使う機会がないことが最善だとは思うが、緊急時の選択肢の一つとして覚えておきたい。
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