運動音痴のApple Fitness+
2020年秋からAppleが米国で提供を開始し、ことし2026年1月に日本で満を持してリリースされたApple Fitness+。Apple WatchやiPhoneを連係させることで運動を促進するAppleのサブスクリプションサービスだが、結論から言うと私は解約をした。実際のリアルな体験談をもとに、ド級の運動音痴の目線からApple Fitness+について考える。
Apple Fitness+の概要
Apple Fitness+は、前述したようにAppleが提供するフィットネスサブスクリプションサービスだ。トレーナー主導のワークアウト・メディテーションのレクチャー動画が多数用意されており、それをiPhone・iPad・Apple TVに表示することで「トレーナーと一緒に」運動やメディテーションをすることができる。Apple Watchや、心拍数センサーを搭載したAirPods Pro 3・Powerbeats Pro 2と合わせて使うことで、その数字が記録されるほか、連係する動画を表示している画面の方にもアクティビティリングや心拍数の数字が表示されることで、映像と同時に確認できるようになっている。
Apple Fitness+では筋力トレーニングやヨガ、ピラティスにダンスなど、12種類にわたるワークアウトに加えメディテーションによる幅広いコンテンツが提供されている。
トレーナーと一緒に運動をする、というところがテーマであるため多言語対応がなかなか進まなかったが、日本では2026年1月21日よりデジタル翻訳音声と字幕によってワークアウトとメディテーションが提供されている。月契約と年契約の2パターンがあり、前者は月980円、後者は7800円と比較的安価であることも特徴だ。
体験記
ここからは、実際に筆者が契約をして体験をしたもののうち、いくつかの運動をピックアップして紹介する。
サイクリング (ジェシカ – YOASOBI)
ただ運動をするだけではつまらない、というところでどのセッションにも背景の音楽が設定されているが、日本リリースされる際にYOASOBIが抜擢されたものが多数用意された。その中で、今回筆者が体験したのはインドアサイクリングだ。いくら自転車に乗れない運動音痴といえども、インドアサイクリングなら転ばない。
一人で音楽を聴きながら漕ぐのと違い、音楽に合わせてトレーナーが「ここは本気で」「ここは流して」とガイドしてくれるため、それに従うことで無理のない範囲で進めることができる。「本気で」と言われる箇所については、そのカウントダウンがApple Watchと画面上に表示され、その多くはYOASOBIの楽曲のサビになっていることでモチベーションの維持はしやすいと感じた。

また、画面に「カロリー消費バー」という、その名の通り横軸が消費カロリーになっている目安の表示がビジュアライズされる。そのバーは、同じワークアウトを行った他のユーザーと比べて自分の運動量が上回っていれば右に、下回っていれば左に進むという相対比較の仕組みだ。特に頑張った場合には「参加者の集団より先行しています」という表示がされることで自分の努力が自信に繋がった。

HIIT(ブライアン)
次に行ったのは高強度インターバルトレーニング、略称HIITだ。これは筆者にとって特にきつかった体感があるセッションだった。その名の通り複数のトレーニングを繰り返すもので、短時間に高強度のものをこなすという過酷なものだ。
開始時には、激しい運動を伴うことからApple Watchだとズレることによって心拍数がうまく計測できない可能性があるという旨の説明が表示される。ただし、その説明によれば心拍数がうまく計測されない場合でも、内蔵の加速度計を用いることで消費カロリーは計測されるそうだ。実際、この体験でもアクティブキロカロリーは正しく記録された一方、心拍数は30秒から1分程度記録されていないタイミングがあった。

ワークアウトのセッション動画では3名のトレーナーが映っており、中央のメインキャストの方の名前がそれぞれのセッションのタイトルとなっている。残りの2名は、それぞれメインキャストよりもより強度な運動をする人向け、より簡単な運動をする人向けとなっている。つまり、筆者は簡単な運動をする人向けのトレーナーを頼って進めることでこのセッションをこなすことができる、という魂胆だ。
ただ、当然この簡単バージョンだとしても筆者にとって過酷なことには変わらない。10分間で平均心拍数147BPM、合計117kcalは純粋にキツかった。

ウォーキングの時間(渡辺直美/山下智久)
「ウォーキングの時間」は他と少し毛色の異なるコンテンツだ。他のセッションは画面を見ながら運動をすることを前提にしているのに対し、この「ウォーキングの時間」は著名人の話を聞きながら歩くオーディオワークアウトだ。iPhoneからエピソードを選ぶことでApple Watchでも自動的にウォーキングのワークアウトが開始される。

日本では、サービス開始時に渡辺直美氏が、追って2月中旬に山下智久氏が起用されたウォーキングの時間が公開された。
筆者は普段からPodcastコンテンツを聴きながら散歩するのが好きであり、その延長線上にあるように感じるウォーキングの時間はいちばん抵抗感なく始めることができた。両氏ともに個人の実体験を話されており、その話に関連する音楽も流れることから、あとでApple Musicで気になった音楽を聴くことができるのも特徴だ。さらに、歩いているときのステップ音が乗っていることから、「一緒に歩いている」という感覚がしてモチベーション維持につながった。
使って感じたApple Fitness+のよさ
先ほどから述べている通りだが、やはりApple Watchと連係できる点は非常に魅力に感じた。筆者はアクティビティリングを普段から達成するよう心がけて生活していたり、フィットネスアプリでゲットできるバッジを集めてみたりと、Apple Watchを軸とした運動習慣が生きているからこそ、そこにフィットすると感じた。
また、筆者のような運動音痴でも諦めずにできる範囲であったことは配慮されていると感じた。日本語での実装は機械音声だが、トレーナーの声を元に学習しているためトレーナーと一緒に運動しているという一体感が生まれたと言っても過言ではない。YOASOBIや山下氏など音楽や著名人が起用されていることも、その入り口としてApple Fitness+を始める理由の1つになった。
ただ運動用の動画を並べるのではなく、「音楽」「トレーナー」「数字」が一箇所に集まることで運動するためのハブとして見せている点はAppleが作るサービスならではだ。
それでも辞めた理由
Apple Fitness+というサービスは素晴らしいと感じた。一方で、そのサービスをフルに活用するためには、サイクリングマシンやトレッドミルなどの環境が欲しくなることも事実である。もちろんマット1枚を敷くだけでできるセッションある一方で、運動音痴の目線からするとそれらだけを続けることも難しく、ジムに行くというハードルが生まれてしまう。しかしそのようなジムに行くことが習慣化できるかと言えば筆者にとってはノーであり、Apple Fitness+についても結局「お金だけ払って活用できていない」と言う典型的パターンに陥った。
Apple Fitness+には12のジャンルに対して様々なコンテンツが用意されているが、またそれを選ぶこともハードルになっていたように感じた。時間や強度による絞り込みも存在するが、筆者の初見ではまずどう絞り込んでいいかがわからなかった。運動をするモチベーションが高い人にとっては問題ないだろうが、運動音痴の目線からするとファーストステップで躓いてしまう点があるように感じた。
Apple Fitness+が向いている人、向いていない人
向いている人
自宅で運動する習慣をつけたい人、あるいはついているがより効率的に意味のある運動をしたい人には強くお勧めできる。また、その中でも特にApple Watchなどを利用して数字によってモチベーションが上がる人は、このApple Fitness+がマッチするだろう。普段からアクティビティリングやバッジを意識して過ごしていると、その延長線上として利用できるのは大きな強みだ。

さらに、専用で大掛かりな器具が欲しくなる、という話は前述した通りだが、導入しにくい日本の住宅環境も踏まえてか、エニタイムフィットネスの契約期間中はApple Fitness+を追加料金無しで利用できるというサービスがある。トレーナーはつかない一方で器具が豊富にあるエニタイムと、トレーナーによる映像でレクチャーしてくれるApple Fitness+というお互いの特性を活かしたコラボレーションになっており、既存のエニタイムユーザーはエクササイズの道筋を知るツールとして、Apple Fitness+ユーザーはサイクリングやトレッドミルなど器具を使ったワークアウトを行う場所として、それぞれ活用することができるだろう。
向いていない人
筆者もこちら側になったわけだが、運動への苦手意識が強い人にはお勧めしにくい。Apple Fitness+は+の名の通り本格的なサービスであり、動画を選ぶことや、トレーナーの映像を見ながら体を動かすことに重さを感じる人にとっては、少し億劫にさせる側面が強いと感じた。Apple Watch単体でも記録するツールとしては十分であり、トレーナーに教わって本気で体を動かしたい、という強い意志がない限りこの契約が足枷となり、運動への意欲がかえって下がる結果となる場合もあるだろう。
総括
Apple Fitness+は、Appleらしさの詰まったサービスで、Apple Watch・iPhone・iPadなどAppleデバイス間の連係や、音楽やトレーナーによる演出は「ただのレクチャー動画配信」とは明確に違う魅力がある。さらに、著名人を起用したり、選べるワークアウトの幅が広かったりと、運動に対するさまざまな需要をカバーしているサービスだった。
それでも筆者は解約した。決してApple Fitness+の完成度が低かった、というわけではない、どころか運動音痴の筆者でも運動を楽しむきっかけを作ってくれた、完成度の高いサービスだったと感じた。しかし、筆者の生活スタイルにこの運動の習慣化が入り込むことは叶わなかった。
この運動音痴の筆者にとっては、トレーナーの動きによって本気で運動することよりも、少し気が向いた時にApple Watchで散歩や軽い運動を記録する程度の距離感だったように感じた。Apple Fitness+は辞めたが、Apple Watchと共に体を動かす生活は、これからも続けていきたい。
脚注
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/01/apple-fitness-plus-now-available-in-japan/
- https://www.apple.com/jp/apple-fitness-plus/
- https://support.apple.com/ja-jp/108761
- https://support.apple.com/ja-jp/102128
- https://www.anytimefitness.co.jp/2026_0121_pdffile/
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